Artificial Intelligence(AI、人工知能)とは、人間の知的ふるまいの一部を、ソフトウェアを用いて人工的に再現する技術のことです。
AIという用語は1956年に造られ、1990年代にはチェスの第一人者を負かして一般にも知られるようになりました。このように古くからある用語ですが、データ量の増大、アルゴリズムの高度化、コンピューターの性能やストレージ技術の発展により、近年AIという略語はいっそう広く知られるようになっています。特に囲碁や将棋のプロをも負かしたことで、AIの技法のひとつである「ディープラーニング」が有名ですね。
AIには、「コンピューターが人間のように学習し、知識をもとに推測する」ことが求められ、そのために複雑なプラットフォームやアルゴリズムが用いられます。身近なところではスマートフォンの音声認識や障害物を避ける自動運転、インターネットの画像検索やウェブページ検索、産業分野のロボット制御や画像処理など、さまざまな場所にAIが活用されています。
最近のAIの事例のほとんどは、ディープラーニングと自然言語処理に大きく依存しています。これらのテクノロジーを応用すると、大量のデータからパターンを認識させることで、ビジネスや生活における様々な難しいタスクをこなせるようにコンピューターをトレーニングすることができます。
AIは、大きく2種類に分けることができます。
汎用人工知能は開発のために解決しなければならない問題も多く、現在実現できているAIはすべて特化型のものと言えましょう。
AIを強いAI、弱いAIと区分する場合もあります。
機能の高度さなどによる分類で、どれだけ人間に近い行動をするかが判断基準となります。どこまでが弱いAIでどこまでが強いAI、といった明確な基準はありませんが、一般的に人間のような意識を持たずに機械的に作業などをこなすもの(つまり人間の一部の知能の代わりをするだけの機械)を弱いAI、まるで意識があるように学習して意思決定できるもの(つまり知能を持つ機械)を強いAIと呼んでいます。SF映画などで登場するロボットが強いAIと言えますね。研究はされていますが、現実にはまだ実現できていません。ただ強いAIの研究で生まれた技術が弱いAIに応用されて成果を挙げています。ディープラーニングもそのひとつです。
AIとロボットも第4次産業革命の中で活用が期待される技術です。
AIは、IoTで集められたデータを分析し、データの規則性を見つけたり、実際に機械の制御をしたりする役目となります。自動車を例にとると、3D地図、周辺車両、歩行者、信号、渋滞、事故、交通規制、路面などの情報をAIがIoTなどから入手し、分析することで、AIによる自動運転が可能になると期待されています。人間の言葉を理解して翻訳する自動翻訳や同時通訳などもAIの範疇のひとつである自然言語処理技術の成果として期待されています。
AI(人工知能)の研究は1950年代から続いていますが、その過程ではブームと冬の時代が交互に訪れてきました。現在は第3次のブームとして脚光を浴びています。
平成28年版情報通信白書(第4章第2節)には、下図が掲載されています。
第1次AIブーム
1950年代後半~1960年代の第1次AIブームでは、コンピューターによる推論や探索により、特定の問題に対して解を提示できるようになりました。
しかし、当時のAIでは、迷路の解き方や定理の証明のような単純な仮説の問題を扱うことはできても、様々な要因が絡み合っているような現実社会の課題を解くことはできないことが明らかになり、一転して冬の時代を迎えました。
第2次AIブーム
1980年代からの第2次AIブームでは、専門分野の知識を取り込んだ上で推論し、あたかも専門家であるかのように振る舞う「エキスパートシステム」がいろいろと誕生しました。AIが実用レベルに達したと言えましょう。日本では、政府による「第五世代コンピューター」と名付けられた大型プロジェクトが推進されました。
しかし、当時のAIでは、コンピューターが必要な知識情報を自ら収集して蓄積することはできず、人間がコンピューターにとって理解可能なように内容を記述しなければなりませんでした。専門家の知識は定式化できないことも多く、実際には特定の狭い領域の問題について解析するにとどまらざるを得ませんでした。こうした限界から、AIは再び冬の時代を迎えました。
第3次AIブーム
第3次AIブームは、2000年代から現在まで続いています。「ビッグデータ」と呼ばれる大量のデータを用いることでAI自身が知識を獲得する「機械学習」が実用化され、次いで知識を定義する要素を、AIが自ら習得する「ディープラーニング(深層学習や特徴表現学習とも呼ばれる)」が登場したことが、ブームのきっかけとなりました。
現在では、「ビッグデータ」の活用に熱心な民間企業が主導する形で、AIに関する研究開発競争が展開されています。