インターネット(internet)の語源は、一般名詞のインターネットワーク(internetwork)で、本来の意味は「ネットワーク間のネットワーク」や「複数のネットワークを相互接続したネットワーク」です。ただ、日本語でインターネット( 英語では大文字で始まるThe Internet)という場合はもっと限定的で、 IPという約束に従って接続された、 世界規模のコンピュータネットワークを意味します。
パソコン通信のサービスはプロバイダーが提供するネットワーク内だけに有効でしたが、インターネットの情報通信技術を利用して、同種のサービスがネットワークの垣根を超えて、進化した形で提供されるようになって、個人での情報サービスの利用が一般化しました。
インターネットの情報通信技術には、例えば電子メールやウェブなどの技術も含まれます。
通信技術の発展のきっかけはそのほとんどが軍事目的でした。インターネットもその例にもれず、米国防総省の高等研究計画局(ARPA:Advanced Research Projects Agency)が資金を提供した新たな通信システムの開発研究により生まれたものです。一説によると、従来の電話回線を使った軍用回線は、核戦争時にはまったく役に立たなくなるという考えからこの開発研究が行われたとも言われています(ただし、米国防総省はこれを否定しています)。
その結果、インターネットで基本的な考え方となっている「パケット交換方式の通信(パケット通信)」と「分散型ネットワーク」という2つを実現するネットワークが考え出されました。
1969年に、米国の複数の大学間で、24時間常時つながっているネットワーク「ARPAnet」の運用が開始されました。1970年代には、ARPAnetに参加していない大学や研究所でも同様のネットワークが生まれました。1980年代には、ARPAnetと軍事ネットワーク(MILnet)との分離がなされ、ARPAnetは学術ネットワークとして拡大していき、1990年頃には米国中の学術系ネットワークが相互に接続されました。
ヨーロッパでも1982年に、オランダ、デンマーク、スウェーデン、イギリスの4ヶ国を結ぶEUnet (the European UNIX network)の運用が開始されました。
1982年には、TCP/IPと呼ばれる通信プロトコル(規約) が標準化され、TCP/IPを採用したネットワーク群を世界規模で相互接続する「インターネット」という概念が提唱されています。
日本では、1984年に東京大学、東京工業大学、慶應義塾大学間で構築された研究用ネットワークJUNET(Japan University/Unix NETwork)が起源となり、1988年から民間企業も参加したWIDE(Widely Integrated Distributed Environment)プロジェクトでネットワーク技術等の実験が行われました。
政府機関や研究機関によって運営されたこれらのネットワークは、商業利用を禁じられていましたが、米国では、1989年にインターネットとパソコン通信の間でメールのやりとりが可能になったことをきっかけとして、1990年に営利目的のインターネットサービスプロバイダが出現して、インターネットの民間利用が始まりました。日本でも、1993年に郵政省の許可が下りて商業利用が始まりました。
1993年にはホームページ閲覧ソフト(ブラウザ)の「Mozaic」が開発され、文字データだけでなく、画像データもインターネット上で閲覧できるようになりました。
1990年代半ば以降、インターネット利用者は爆発的に増え、インターネットは文化や商業に大きな影響を与えています。電子メールやインスタントメッセージ、VoIPによる「電話」、ビデオチャットなどの音声や動画を交えた世界をまたがるリアルタイムのコミュニケーション、World Wide Web (ホームページ)、ブログ、ソーシャル・ネットワーキング、音楽や動画の配信サービスなど、特定あるいは不特定の多数の人を相手にする情報発信がインターネットによって可能になりました。
World Wide Webとは、インターネット上で網の目のように相互に結びついた文書システムのことです。世界中に広がる情報網がクモの巣のように見えるという理由で、World Wide Web(略してWWW)と名付けられました。WWWは単にWebとも呼ばれています。
WWWは、研究者が情報を簡単に閲覧できる方法として、ハイパーテキスト(HyperText)と呼ばれる文書同士を繋げる仕組み(具体的には、文書中に別の文書のURLへの参照を埋め込むハイパーリンク(HyperLink)と呼ばれる手法)が開発されたことに端を発します。HTML(HyperText Markup Language)と呼ばれるハイパーテキストを使った文書の記述方法は比較的単純で分かりやすいものでした。
同時にこの文書を閲覧するためのソフトウェア(つまり後のWebブラウザ)も開発されました。閲覧者はこのソフトウェアを使って、表示している文書中のハイパーリンクが付された箇所をクリックやタップする事で、ハイパーリンク先の文書を表示できるという仕組みです。
これらの手法が公開されて、インターネット上に展開されたことで、世界中に散在する文書同士を相互に参照することができるようになったのです。
当初は文字(テキスト)情報だけでしたが、やがて画像も扱えるWebブラウザが開発されました。これをきっかけに、WWWはホームページという形で一般の企業や個人にも瞬く間に広まったのです。このため今ではWWWやWebという言葉がインターネットの代名詞のようにも使われています。
上述の通り、インターネットの開発研究の基本的な考え方は「パケット方式の通信」と「分散型ネットワーク」にありました。
データを小さな単位に分割して送受信する通信方法をパケット(packet)交換方式あるいはパケット通信といいます。パケット(packet)とは、直訳すると小包みのことです。
パケット交換方式に対して、音声通話や専用線による従来型のデータ通信方法を回線交換方式と呼びます。
パケット通信の仕組みは次の通りです。
端末(またはホスト)からのデータは、PAD (Packet Assembly Disassembly) と呼ばれる装置・機能(パソコンやスマホなどにはPAD機能が内蔵されています)で、相手先やパケットの順番などの情報から成るヘッダー付きのパケット群に変換されてから、パケット交換機まで送出されます。パケット群は、一旦、パケット交換機の記憶装置に蓄積されて、伝送路の空いている時間にパケット単位に順次(伝送路の空いている隙間で細切れに)送り出されます。パケットは受信側のパケット交換機の記憶装置にも蓄積された後、受信側のPADに送出され、PADで元のデータに変換されて端末(またはホスト)に届けられるという仕組みです。
パケット通信では、データが小分けされて、パケット交換機で蓄積されていますので、通信が一時的に寸断された場合でも、続きのデータを送ることができます。代わりの回線が使える場合にはそちらに自動的に引き継ぐこともできます。移動中でも、携帯電話やスマホでストレスなくデータ通信を行うことができるのも、パケット通信が使われているからです。
また、音声通話などの回線交換方式のように回線を占有するのではなく、複数のユーザーで同じ回線をシェアできます。近年では、災害などの不測の事態により電話輻輳(ふくそう)-電話が繋がりにくい状況-に陥った場合にも、回線を効率的に使えるパケット通信は大きな規制を受けずに使えるので見直されています。
従来方式のコンピュータネットワークは、メインフレームから複数の端末に、「1対多」の関係で制御がされる集中型のものでした。集中型のネットワークでは、主となるシステムは一つの設備のみ(予備機を備えることもあります)で、主システムに障害が発生すると、機能全体が止まってしまう危険性があります。また、通信回線も基本的にはメインフレームから端末までを一直線でつなぐようなイメージ(実際には代替の回線を用意することがあります)で、回線に障害が発生するとその端末での機能が麻痺してしまうことになります。
ミサイルなどの攻撃を受けることを想定して研究が開始されたインターネットの原型であるARPAnetでは、この集中による危険性を回避するために、ネットワークの一部が故障しても機能しつづける分散型のネットワークを構成し、障害時には自動的に迂回して機能を維持できることが基本的な考え方となりました。
インターネットは、「多対多」の関係で制御がされている分散型のネットワークです。同等の機能を持つサーバや通信経路を相互接続することで、コンピュータネットワークが部分的に欠落しても、瞬時に迂回する形で通信機能を確保し、全体的な(=致命的な)機能停止が発生しないよう設計されています。
インターネットの世界では、全体を統括するコンピュータは存在しません。全世界に無数に散らばったサーバが相互に接続され、少しずつサービスを提供することで成り立っているのです。
インターネットで使用される標準の通信プロトコル(規約)一式をインターネット・プロトコル・スイートと呼びます。前述のように、インターネット・プロトコル・スイートはインターネットの黎明期に定義され、現在でも標準的に用いられているTCP(Transmission Control Protocol ) とIP(Internet Protocol)という2つのプロトコル にちなんで、TCP/IPプロトコル・スイート(以下、略してTCP/IP)とも呼ばれます。
TCP/IPの各プロトコルは、上から、アプリケーション層、トランスポート層、インターネット層、リンク層の4つの階層で構成されています。
アプリケーション層はアプリケーションソフトウェアが扱う通信サービス(ファイルやメールの転送など)の規約を定めている階層です。Webブラウザで使用されるHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)や、ファイル転送で使用されるFTP(File Transfer Protocol)などの通信サービスのプロトコルがこの階層に含まれます。
トランスポート層はエラー訂正、再送制御など、通信の信頼性に関わる規約を定めている階層で、TCP(Transmission Control Protocol )はこの階層に属します。
インターネット層はネットワークをまたがってホストツーホストの通信を実現するための規約を定めている階層で、パケットに分割して通信を行うことを規定するIP(Internet Protocol)はこの階層に属します。
リンク層はネットワークに接続されたホスト間あるいはホストとルータ間の直接の(つまり隣り合っている機器間の)通信を規定している階層で、ネットワークインターフェイス層とも呼ばれます。
IPアドレス
IPでは通信の相手先を特定するために「IPアドレス」が使われます。インターネット内で固有のIPアドレスをホストや端末に割り当てることで、ネットワークの種類に関係なく、世界中のどの場所からでも通信したい相手ホストや端末を特定できるという考え方です。
現在主流となっているIPのVersion4(IPv4)では、32ビットのIPアドレス(以下、IPv4アドレス)が使用されます。IPv4では、最大約43億個(2の32乗)しか割り当てができません。そのため、IPv4アドレスは既にほぼ枯渇した状況にあり、新規の割り当てはできなくなっています。
IPv4アドレスは、通常は、アドレスの値を8ビット単位で分割して、0-255の数字4組をドットで区切った形で表記されます。
(例1)210.238.188.73
(例2)192.168.0.1
IPアドレスは、大別するとグローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスとがあります。
グローバルIPアドレスはインターネットの接続用に利用されるもので、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)という非営利団体(2015年に民営化された)を頂点とした階層的な管理会社群によって、重複が発生しないように管理されています。
プライベートIPアドレス(ローカルIPアドレスともいいます)は、社内LANなどのプライベートネットワーク内のアドレスとして使われるもので、その管理はプライベートネットワーク管理者に任されています。プライベートIPアドレスには、10.(クラスA)、172.16.~172.31.(クラスB)、192.168.(クラスC)で始まるアドレスが使われます。クラスとはネットワーク規模を示したもので、最小のものがクラスCとなります。クラスCでは最大65,536台分のプライベートIPアドレスを管理できます。
枯渇問題に対処するために規定されたIPのVersion6(IPv6)では、128ビットのIPアドレス(以下、IPv6アドレス)に拡張されました。これにより、最大340潤(2の128乗)の割り当てができるようになり、現在はIPv4とIPv6が併用されています。また、将来的にはIPv6に完全移行することが課題になっています。
IPv6アドレスは、通常はアドレスの値を16ビット単位でで分割して、0~fまでの16進数の文字列8組をコロン(:)で区切った形で表記されます。
(例3)2001:0db8:bd05:01d2:288a:1fc0:0001:10ee
ドメイン
ドメイン(Domain)は直訳すると領地とか領域のことです。インターネットの分野では、コンピューターやサイトを管轄している組織を指します。その組織を指す名称をドメイン名といい、世界で唯一の名称として登録されます。
【便利知識】
ドメイン名はインターネットにおける住所みたいなもの、という説明がよくなされます。「住居表示の一部」という方が良いのかもしれません。
電子メールでは、メールアドレスの@(アットマーク)の右側の部分がドメイン名です。ホームページなどのURL(ユーアールエル、Uniform Resource Locatorの略)では、wwwなどのホスト名に続く部分がドメイン名です。
(例4)otoiawase@npo-chiba-keiei-oentai.org
(例5)www.npo-chiba-keiei-oentai.org/index.html
(例6)www.jal.co.jp/index.html
(例7)www.chiba-it-literacy.jimdo.com/
ドメイン名は、レジストリーというドメインの管理組織が管理しています。ユーザーは、レジストラーと呼ばれるドメインの登録業者に申請して、ドメイン名を取得することになります。
ドメイン名の右端をトップレベルドメイン(TLD)といい、誰でも登録できる一般トップレベルドメイン(gTLD)と、国や地域に割り当てられた国別トップレベルドメイン(ccTLD)の2種類に大別されます。
gTLDは、「.com」「.net」「.info」「.biz」「.org」、ccTLDには、日本の「.jp」、中国の「.cn」、米国の「.us」、フランスの「.fr」、イギリスの「.uk」などがあります。
「.jp」などのccTLDの場合には、右端から2番目に、組織種別などを表すセカンドレベルドメイン(2LD)が付きます。「.co」(民間企業)、「.ac」大学などの教育機関、「.ne」(ネットワークサービス)、「.go」(政府機関など)、「.or」(非営利事業)などです。
gTLDの左側、あるいはSLDの左側に置かれるのが、サードレベルドメイン(3LD)です。サードレベルドメインは利用者が独自に名付けて登録するもので、トップレベルドメインからサードレベルドメインまでを合わせて、独自ドメインと呼びます。独自ドメインは早いもの勝ちであり、通常は登録と維持に費用がかかります。
独自ドメインのさらに左側に、サブドメインを付けることがあります。サブドメインは1つのドメインを用途に応じて複数に分割するときに使われます。独自ドメインの取得者が管理でき、複数のドメインを取得する手間やコストを省けるのがメリットです。例6における「chiba-it-literacy」がサブドメインの例です。
【便利知識】
日本を表す「.jp」は、当初SLDとして組織種別を付けるccTLDとして扱われ、「.co」などの決まりきったSLDが必ず付加されていました(これを属性型JPドメイン名と呼びます)。2001年から汎用JPドメイン名が運用開始され、「example.jp」のようにSLDを付けない独自ドメインの登録ができるようになりました。現在は属性型JPドメイン名と汎用JPドメイン名が併存しています。
【便利知識】
ドメイン名のピリオド(.)で区切られた部分はラベルと呼ばれます。ラベルの長さは63文字以下、ドメイン名全体の長さは、 ピリオドを含めて253文字以下でなければなりません。ラベルには、英字(a~z)、数字(0~9)、 ハイフン(-)が使用できます。ラベルの先頭と末尾の文字はハイフンは使えません。 ラベル中では大文字・小文字の区別はなく、 同じ文字とみなされます。
国際化ドメイン名(IDN:Internationalized Domain Name)と呼ばれるドメイン名では、 上記以外のさまざまな文字が使用できます。 例えば、「ちば経営応援隊.jp」などの日本語JPドメイン名の場合は、 上記に加えて全角ひらがな、カタカナ、漢字なども使用できます。 但し、1つのラベルの長さは全角・半角に関わらず15文字以下に制限されます。
DNS
ネットワークに接続された個々のコンピューターや通信機器には、IPアドレスが割り当てられて、インターネットでは、このIPアドレスを使ってコンピューターを識別しますが、IPアドレスの番号は覚えにくいため、通常はIPアドレスの代わりにドメイン名(正確には、FQDNと呼ばれるホスト名とドメイン名を組み合わせたもの)を用います。ドメイン名をIPアドレスに変換するシステムのことをDNS(Domain Name System)といいます。
(例8)210.238.188.73 www.npo-chiba-keiei-oentai.org
(例9)52.31.109.102 chiba-it-literacy.jimdo.com
インターネット技術を使用した社内など組織内のネットワークをイントラネット(intranet)と呼びます。「inter-」が「間の」という意味の接頭辞であるのに対して、「intra-」は「内部の」という意味の接頭辞です。さらに、複数のイントラネット間あるいはインターネットとイントラネット間を接続するネットワークをエクストラネット(Extranet)と呼ぶこともあります。
イントラネットは、技術の点から見れば、LANやWANで構築されていた社内ネットワークにTCP/IPやFTPなどのインターネットで標準化されている通信プロトコルを取り込んだものということになります。インターネットの普及で汎用化した通信プロトコルと通信機器を活用することで、情報システムに要するコストを削減する狙いでした。
しかしながら、イントラネットという用語が定着したのは必ずしも上記の理由だけではありません。むしろ
組織内向けのWWW(World Wide Web)サーバやグループウェアの導入などによって、「情報の発信・共有」や「業務支援」などを実現できることが一番大きな理由です。
Webブラウザやメールソフトなど、インターネットで使い慣れたアプリケーションソフトをそのまま流用でき、操作性の点でも統一性が図れること、インターネットと連携したシステムの構築などが容易に行えること、同じパソコン端末で情報系システムや業務システムを操作できることなども、イントラネットの利点です。
イントラネットではメールやスケジュール管理などの基本的なものから、業務用データベースシステムと連動したWebアプリケーションなどの複雑なものまで、目的に応じて様々な種類のサービスが導入されます。