端末(英語ではTerminal)という用語は、元々、通信の世界で用いられていたものです。歴史的には、コンピュータよりも通信の方が古いのです。通信を中継するなどの機器と対比して、末端にある機器ということで端末と呼ばれていたのです。電話機やテレックスの入出力装置などが端末の代表例です。
定義的には、以下となります。
コンピュータが生まれ、やがて、専用回線を介して、利用者がコンピュータを利用する、いわゆるオンライン化が始まると、コンピュータをホスト、利用者が使用する機器を端末(あるいは端末機)と呼ぶようになりました。定義的には以下となります。キーボードを備えたCRT装置やプリンタなどがコンピュータ分野での端末の代表例です。
初期の端末は、メッセージの送受信と表示のみを行う、いわゆるダム端末(Dumb Terminal)でした。Dumbとは無口なとか馬鹿な、という意味です。つまり他の能力を持たないというものでした。
やがて、コンピュータの小型化が進み、パソコンのように処理能力に優れた機器が利用者側に普及し、パソコン上でホストコンピュータを利用することができるようになりました。この際に開発されたものが、ダム端末に代わり、専用回線経由でホストコンピュータを利用するための「端末エミュレータ」というソフトウェアです。
さらに、インターネットが生まれ、その技法を企業内などでも応用するイントラネットが普及すると、専用回線ではなく、イントラネット経由で、パソコンで業務システムを操作したいという形に変わってきました。そのための「端末エミュレータ」が開発されたり、あるいは、端末エミュレータの代用として汎用のブラウザが利用されるようになったのです。
インターネットがきっかけとなり、一般家庭でのパソコン利用も急速に広まりました。いまでは、インターネットネットに接続しないパソコンはほとんど無いと言って良いでしょう。
家庭のパソコンは、それ自身が家庭内でのホストコンピュータということにもなりますが、インターネット経由での各種サービスを利用する際は端末ということになります。
公衆の電話網経由で情報サービスを利用することもできるようになりました。さらに、携帯電話に代わってスマートフォンが急速に普及しています。スマートフォンでは、パソコンと同様に、カメラやサウンド機能との連係などではパソコンを上回る便利さで、インターネット経由での各種サービスが利用できます。
携帯電話やスマートフォンも端末なのです。
ネットワーク(Network)という用語は、幅広く使われています。例えば、人と人のつながり(人的ネットワーク)もネットワークと呼ばれますし、鉄道や道路などの交通網もネットワークと称されます。テレビやラジオの放送も、放送局同士がネットワークされています。
ネットワークは人やものごとを「網状につなげたシステム」の総称です。
最近は、SNS(Social Networking Service)のように、人的ネットワークを対象とするITサービスも出現していますが、IT用語としてのネットワークは、主に、コンピュータネットワーク(情報ネットワークとも称される)や通信ネットワークを指します。
冒頭に述べたように、コンピュータよりも通信の方が歴史は古く、情報システムの利用が今のように普及したのは、コンピュータの進化に加え、通信との融合が進んだからと言えます。
通信の英語は、Communication(あるいはTelecommunication)です。つまり、離れた場所、あるいは多数の人との間で情報を伝達することが通信である、ということです。郵便や伝書鳩のような仕組みも通信の一種と言えますが、通信技術の基となったのは、狼煙、ほら貝や太鼓、手旗信号など、伝えたい内容を音や符号に変える工夫です。特に軍事目的では通信が必要かつ不可欠で、有線の電気通信、無線通信、暗号化などの通信 技術は、敵に悟られず、味方にだけに素早く通じ、できるだけ天候などに左右されない、前線でもすぐに利用できる、といったような軍事的な必要性から発達を遂げてきたと言えます。
18世紀から19世紀にかけての産業革命により、機械などの製造技術が飛躍的に進歩し、社会や経済に大きな変化が起きました。通信技術の民事利用も産業革命の進展とともに広がりました。例えば、鉄道です。鉄道では列車の運行状況を把握する必要性から電気通信などの通信技術を利用したのです。
電気通信を略して電信(Telegram)と呼びます。電信は、伝えたい文字を符号化し電気の信号に変えて送るもので、電線をつなぐことにより、離れた場所との情報のやりとりがより速く確実にできるようになりました。符号化に関しては、短音(トン「・」)と長音(ツー「-」)とを組み合わせるモールス符号が有名ですね。
19世紀中頃には、電信設備事業が拡大し、電信の中継所も多数設置された、「電信技師」という新しい職業も誕生しました。現在の通信システムの原型は電信によって形作られたのです。
有線のネットワーク(網)の拡大は国内にとどまらず、次々と敷設された海底ケーブルにより地球規模に広がりました。
20世紀になると、無線通信が利用されるようになりました。電線をつなぐ(有線)代わりに、無線中継器間に電波を飛ばして信号を伝達する方式が無線通信です。
一方、電信の技術を応用して、電話や電報のサービスが生まれました。
音は空気の振動によって伝わります。この空気の振動を電気の信号に変換することによって電線に伝え、再び空気の振動に戻すことによる音声の伝達を、電気通信の方法として実用化させたものが電話です。
電報は、文字を電気信号に変換して電線で送り、電気信号を再び文字に置き換えて配達するものです。電報は、手紙より速く配達され、文字としての記録も残ることから、電話にはない便利な一面が評価され、一般家庭への電話機の普及がまだ十分でなかった時代には便利に利用されていました。今でも祝電や弔電の形で一部で利用されていますね。
ラジオ放送やテレビ放送は、無線通信の技術を応用したものです。
20世紀の後半には、電話回線を利用して、紙に書かれた文字や画像を送ることができるファクシミリ通信のサービスが始まりました。
さらに電話も、船舶での利用を目的として無線電話が開発されました。この無線電話の技術は、自動車電話やショルダーホンなどの時代を経て、携帯電話として目覚ましい発展を遂げています。
電子計算機と呼ばれていた初期のコンピュータは、軍事目的などの技術計算を高速に行う目的で開発されましたが、やがて、コンピュータの強みである大量データの自動処理、高速処理を生かし、給与計算や統計処理などの民事目的でも、著しい効果を発揮しました。この時代のコンピュータは、主にバッチ処理という形で単独に使用されました。バッチ処理とは、キーパンチャーによって紙テープやパンチカードの形に加工されたデータを、オペレータがスケジューリングした順にコンピュータに掛けて、処理結果をプリンタに出力させ、現業部門の人が所定の時間に印刷物を受け取りに行く(あるいは配送する)というものです。
EDP(Electronic Data Processing)という用語はこの頃に生まれました。
企業・組織内への展開
やがて、データの発生元の現業部門に小さなコンピュータとプリンタを置き、ホストコンピュータとの間に通信回線を敷設して、現業部門で入力したデータを通信回線を介してホストコンピュータに送り、ホストコンピュータではそれを一括して処理し、結果を通信回線を介して現業部門のプリンタに印刷するというような、リモートバッチという方式が生まれました。コンピュータに通信回線が接続した先駆けとも言えます。
技術計算などの分野では、高価なコンピュータ機器のうち最も高価なCPU(中央演算装置)を有効活用するために、TSS(タイムシェアリングシステム)という方式が生まれました。これも複数のユーザーが通信回線を通してコンピュータに接続する形態のひとつです。
一方で、データを現業部門から直接コンピュータに入力し、即時処理ができないかという研究と開発も進みました。バッチ(一括)ではなく、トランザクション毎にリアルタイム(即時)に処理し、即答するというものです。当然ながら、この仕組みは、ホストコンピュータと入出力のための端末が通信回線で結ばれていることが前提です。
1960年代初頭に誕生したアメリカン航空のSABRE(セイバー)システムを皮切りに、欧米の航空会社では、いち早く、オンラインリアルタイム処理の予約システムが導入されました。日本でも、国鉄(当時)のMARS(マルス)や日本航空のJALCOMなど、座席管理のためのオンラインシステムが1960年代中頃までに誕生しました。
オンラインシステムは急速に広まり、金融、電力、保険、官公庁などに導入されていきました。特に銀行では各支店に端末を置いて、どの支店からでも預金の受払いが出来るようになり、待ち時間が大幅に短縮されました。
この頃までの通信回線は、ホストコンピュータから端末までを専用回線で結ぶというものでした。ホストコンピュータと回線の間には、通信制御装置が置かれ、複数の端末からの入出力の制御と入出力データの変換(文字をビット単位の信号に変換およびその復元)、誤りの検出などの役目を負っていました。
当初の専用回線は公衆の電話回線と同様に、音声というアナログ情報を伝達する方式でしたので、端末側にもモデム(modem)という装置が置かれました。モデムは、デジタルデータをアナログの信号に変換(変調)し、また、受信したアナログの信号をデジタルデータに戻す(復調)装置です。
個人への展開
パソコンの普及とともに、個人向けに、電話回線を利用したパソコン通信サービスの提供が始まりました。パソコンと電話回線の間にはやはりモデム(初期の頃は音響カプラも普及しました)が必要でした。パソコン通信サービスでは、主に電子掲示板機能(BBS)や電子メール機能が利用されました。
電話による通信技術も、初めはダイヤル回線(パルス)だけでしたが、その後、数字情報も送ることができるプッシュ回線(トーン)が利用されるようになり、さらに、通信速度が速く音声以外のデータを大量に送ることができるデジタル回線サービス(ISDN:Integrated Services Digital Network)の提供が始まりました。
ISDNはデジタル回線ではあるのですが、データ通信で利用する際には、相手先のコンピュータを呼び出すためのダイアルアップという手順が必要でした。また、通信速度もその後に普及したADSNに比べて遅く、コンピュータ通信の主流にはなれなかったと言えます。
パソコン通信サービスで提供された電子メール機能も、基本的にはそのプロバイダーの利用者間同士のみでのやりとりに限られました。
個人への情報サービスの本格展開は、インターネットによる各種サービスの提供の始まりがきっかけでした。インターネットについては「インターネット・イントラネット」のページを参照ください。
電話の分野では、1990年代後半にデジタル方式の携帯電話網が整備されるとともに、携帯電話会社(キャリア)間の競争が加速され、結果として携帯電話が広く一般に普及しました。携帯電話を使ってショートメールの送受信サービスが始まり、やがて、NTTドコモの「iモード」などに代表されるように、キャリアの通信網内だけでなく、インターネットを介した電子メールが携帯電話で利用可能になりました。iモードでは、情報提供、ネットバンキング、チケット予約などに加え、着信メロディの配信などの情報サービスが提供され、iモードは携帯電話普及の起爆剤となったのです。
インターネットによる各種のサービスが普及し始めると、パソコンでの情報サービス利用が、モデム経由のアナログ回線あるいはISDN経由というものでは、ダイアルアップの手間や回線速度の点で不満になりました。アナログ回線ではダイアルアップをしている間は音声通話ができないのも欠点でした。(ISDNは電話番号が2つ備わっているので、同時利用ができます。)
2000年頃からは、ADSL、CATV(ケーブルテレビ)、光回線など、ブロードバンド化への本格的な取り組みが始りました。
2008年のiPhone発売をきっかけにして、日本でも携帯電話からスマートフォンへの切り替えが急速に進みました。それに伴って携帯電話網も急速に高速化が求められるようになりました。
ブロードバンド化についての詳細は、「ブロードバンド」のページを参照ください。